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代  表 帰山雅秀
事務局長 後藤 晃

〒066-0028
北海道千歳市花園2-312 
千歳サケのふるさと館

電子メール

北海道水産林務部長  様
北海道環境生活部長  様
北海道石狩振興局長  様

床丹川における治山ダム設置計画の再検討に関する要望書

 石狩振興局管内、石狩市浜益区床丹を流れる床丹川は、これまで魚類の移動や砂礫の運搬を妨げる河川工作物が設置されてこなかったため、殆ど手つかずの自然が残された希少な川です。また、床丹川は,野生サクラマスが大量に自然再生産している河川でもあります。

 サクラマスは、本道の水産資源として貴重な生物であることは言うまでもありません。また、『北海道の希少野生生物 北海道レッドデータブック2001』において保護に留意が必要とされる留意種に指定されており、現在では、研究・行政機関のみならず民間レベルにおいてもその保護に関する取り組みが積極的に進められている貴重な生物です。さらに、昨年閣議決定された生物多様性国家戦略2010においては、希少野生動植物の保全施策の充実、森・里・川・海のつながりの確保を基本戦略として掲げており、サクラマスを含む同様の内容が北海道生物多様性保全計画でも謳われています。床丹川の河川環境と野生サクラマス個体群の保全は、本道におけるサクラマス保護の観点のみならず、国家レベルで推進する生物多様性の保全という観点からも重要であることは明らかです。

 床丹川に生息する野生サクラマスを対象に行った最近の学術的研究から、多くの貴重な知見が得られつつあります。水産総合研究センターの調査によると、床丹川に生息するヤマメ(サクラマス幼魚)の生息密度は保護河川に匹敵するか、それを上回るほど高いことが確認されています。これは、いかに豊かな自然環境が残されているかを示すものと考えられます。また、東京大学が行っている研究によると、床丹川にはスモルトする以前の幼魚(ヤマメ)の時期から、海(河口付近)を利用する個体がいることが確認されています。このような生活史をもつサクラマスはこれまで報告されていません。さらに、水産総合研究センターが今年度に行った調査によって、床丹川のサクラマスが降海する年齢(スモルト年齢)は1歳から3歳まで変異に富むことも確認されています。これまで、3歳で降海するサクラマスは、道北の保護河川以外では確認されていませんでした。このように、床丹川には多様な生態学的特性を有する野生サクラマスが非常に高い密度で生息しており、学術的観点から、非常に重要な河川であると考えられます。その床丹川において、治山ダムが設置される計画があることを知り、私たちは治山ダムが野生サクラマス資源へ著しいインパクトを与えることはもとより、学術研究の発展に深刻な影響が及ぶ可能性があることに強い危惧を抱いています。

 このように、床丹川の生態系保全は大変重要ですが、河口付近で生活されている方々の生命・財産が失われるようなことがあってはなりません。治山ダムはそのために計画されたものと想像されますが、新聞報道等によると、地域住民の一部はダムの設置を積極的に要望しているわけではないようにも見受けられます。また、当該河川の中上流域には苔むした岩が多数見られること、樹齢数十年以上と推定される木々が水際まで生えていることから、大規模な土砂の移動は長期にわたって発生しなかったと推察されます。それにも関わらず、河川生態系の基盤を支える河床礫の改変を通じ生態系に大きなインパクトを与える可能性のあるダムの設置が最良の選択肢であるのかという疑問が生じます。

 以上の状況を総合し、私たちは、床丹川における治山ダムの設置計画を一時中断し、地域住民の安全な生活と河川生態系の保全、さらには、学術研究の発展、これら全てを実現するための方法を早急に模索すべきと考えます。そのためには防災、河川生態学分野の専門家らを交えた検討の場が設置されることを強く要望します。

北海道淡水魚保護ネットワーク
代表 帰山雅秀
2011年7月29日