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第8回北海道淡水魚保護フォーラム

北海道における外来魚の問題

森田健太郎(水産総合研究センター)

森田健太郎(Kentaro Morita)
1974年7月 奈良県に生まれる
2002年3月 北海道大学水産科学研究科博士課程修了
2003年10月~(独)水産総合研究センター北海道区水産研究所
学位はイワナの生態学的研究で取得。現在は北洋のさけます類の資源生態調査に従事。趣味は日本固有のサケ科魚類の水中写真を撮ること。

 


 日本各地でブラックバスの問題が大きく取りざたされて以後,ここ数年,外来魚の問題に対する意識が一般に高まった.一方,冷涼な北海道では,ブラウントラウト,ニジマス,カワマスなどの欧米産のサケ科魚類に対して特に関心がもたれているが,実際には様々な外来魚が定着している.北海道が公表しているブルーリストには23種の国外外来魚と12種の国内外来魚(道外外来魚)が記載されている.上述したサケ科魚類3種に加えて,タイリクバラタナゴ,キンギョ,ブルーギル,カムルチー,ゲンゴロウブナ,コイ,タモロコ,モツゴ,ギンブナ,ナマズ,アマゴの14種がカテゴリーA(定着・影響が懸念)に区分されている.また,自然分布域以外に人為的に導入された種を外来種と定義するならば,北海道に分布するが自然分布域でない湖沼などに広く放流されているワカサギ,ヒメマス,サクラマスなども外来魚といえる.非意図的に放流された可能性のあるフクドジョウも,自然分布しないと考えられた道南で増加している.さらに,個体群のレベルで見れば,ふ化放流の対象となっているさけ・ます類の多くが母川とは異なる川に移植されている.たとえば,道内に放流されているサケとカラフトマスの場合,およそ半分の稚魚が捕獲された川と異なる川に放流されている.同様に,本州ヤマメ(降海型のサクラマスにならず残留型の尺ヤマメとなる)も近年北海道の河川で捕獲されている.

 外来魚が在来魚におよぼす潜在的影響としては,捕食,競争,交雑,病害などが指摘されている.これまで道内の外来魚に関する研究は,多くがサケ科魚類を対象としたもので,分布,生活史,食性,種間競争,交雑に関して一定の知見が蓄積されている.一方,病害や他の外来魚の潜在的影響については知見が少ない.また,上述した知見も同じサケ科魚類同士に対する影響を調べたものが多く,他の分類群に対する影響を調べた例は少ない.国外では,病害(例:旋回病)や他の生物(カジカ,オタマジャクシ,水生昆虫など)に及ぼす影響も懸念されており,生態系全体をみる必要がある.近縁種(あるいは異なる個体群)が放流された場合では,遺伝的固有性の喪失が考えられる.その場合,長い年月をかけてその川に適応した形質の維持に支障がでると考えられ,天然魚の個体数減少に繋がる可能性がある.このように様々な外来魚の影響が想定されるが,現時点で北海道の河川全体を見ると,むしろ,ダム建設や河川改修などの環境破壊の影響が顕著であり,これらの影響は短期的に表面化することが多いため,外来魚の問題が軽視される場合も少なくない.また,川の自然環境の番人である釣り人自身が,外来魚を好んで釣る場合も少なくなく,問題をより一層紛糾させている.あくまで一般論であるが,長期的なスケールで見た場合,外来種の影響は不可逆的であり生息場所の破壊よりも深刻であると指摘されている.国外のサケ科魚類では,導入されてから70年という年月をかけて在来魚が絶滅した例がある.
このように外来魚は在来種に対して一定の影響を及ぼすものの,人間生活と密接に係わっている場合(釣り・漁業)が多い.そのため,自然科学の範疇だけで議論することはできず,社会科学的な側面も考慮した学際的な取り組みが必要である.