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第8回北海道淡水魚保護フォーラム

ダムが北海道の淡水魚に与える影響

福島路生(国立環境研究所)

福島路生(Michio Fukushima)
独立行政法人国立環境研究所に1996年より勤務。現在、アジア自然共生研究グループ・流域生態系研究室にて主にメコン川の淡水魚類の研究、とくにダムの影響評価に取り組む。水産学博士(アラスカ大学)

 


 1953年以降に北海道で行われた計7848件の魚類調査を統計的に解析し、各魚類調査で捕獲された淡水魚類の種数(種の多様度)と魚種ごとの出現確率に及ぼすダムの影響を評価した。種の多様度は北海道のさまざまな地域でダムによる生息環境分断の影響を受けていたが、特に標高の低いところに設置されたダムによって種数の減少量が激しかった。河口堰のように、標高がゼロのところでダムにより堰き止められた場合、淡水魚の種数は全道の平均で9種まで減少すると推定された。また淡水魚類41種のうち、11種において下流に設置されたダムによる負の影響(8種)あるいは正の影響(3種)が認められた。統計解析による推定結果を地図上に示すと、広域的にダムの影響が認められた種(サクラマスなど)と、局所的に限られた流域においてその影響が認められた種(ウキゴリやエゾハナカジカなど)とが存在した。ダム上流域において増加した3種のうちの2つは、古くからダム貯水池に放流されてきた歴史を持つ種であった。ダムによって減少した8種のうち4種、またダムで増加した3種の出現確率については、ダムによる分断年数(ダム建設年から調査年までの年数)もまた有意な説明変数となった。これらの魚類には、ダム建設が長期的な影響を与えていたことになる。なおダムによって減少した8種はすべて回遊性の淡水魚類であった。

 このような解析手法を用いることで、河川管理者や水産関係者はダムによる生息環境分断の影響を魚種ごとに定量化し、地図上に広域的にその度合いを視覚化することが可能となる。それによってダムの影響を、予測し、緩和し、排除するための効果的な保全・再生施策をとることができる。具体的には、除去すべきダムの優先順位を決めたり、建設予定のダムによって失われる生物多様性や生態系サービスを予測したりするなどの応用例が考えられる。