ホームページ 北海道淡水魚保護フォーラム報告 オピニオン 運営委員 書庫 お問い合わせ 活動の記録 更新履歴

第6回北海道淡水魚保護フォーラム

生物多様性保全と自然再生

山田 直佳 (やまだ なおよし)
 北海道スポーツフィッシング協会旭川ブロック/大雪と石狩の自然を守る会


1.活動の動機と目的

 私は、もともと魚が好きでよく川で釣りをしていましたが、釣りを通して川の環境が気になるようになりました。しかし、川の環境をよくするために、自分は何ができるか?と考えたとき、なかなか個人では出来ないことが多いことがわかりました。
 そこで、「北海道スポーツフィッシング協会」という遊漁団体に入り、魚に関わるさまざまな意見や情報を交換しながら、川の環境のために何をすべきかを学んでいます。その活動の中で、川の環境はとても奥が深く、自然界のさまざまなことが結びつき、生態系を築いていることに気づきました。そこで最近は、釣り人の団体だけではなく、白然環境を守り育てる事を目的とした「大雪と石狩の自然を守る会」にも所属し、サケに関する学習活動等を通して、石狩川の自然に対しての認識を深めていく活動をしています。

2.活動内容

1)北海道スポーツフィッシング協会・旭川ブロック
 北海道スポーツフィッシング協会・旭川ブロックでは、会員の知識・技術の向上をはかると共に、釣りをする環境の様々な問題について話し合っています。また、子供たちに、川や魚に触れる機会を持ってもらえるような取り組みをしています。

 親水イベントの開催 旭川市内の河川敷を利用した大規模な祭り「石狩川フェステイバル」の中で、「ちびっこ放流・釣り体験」を行っています。参加者には、魚の生息する環境等について説明後、ヤマメの放流と魚釣りを体験してもらいます。魚釣りは気軽に誰でも出来る遊びで、参加する事で水辺と接し、水辺の環境、自然環境に興味・関心を持つきっかけ作りに繋がると考えています。また、家族連れの参加者が多いことから、釣りを通して家族の絆も深まると考えています。来場者が気軽に体験出来るように、釣りをするための道具一式を用意しているため、手ぶらで参加できます。例年、200組の約500名が参加し、スタッフは事故防止や技術指導・トラブル回避などを行います。

 採卵体験学習会 魚体のしくみと各部名称
の学習、成長の変化を学び、魚の棲む環境も学びます。参加者は、まずオスとメスの見分け方を学びますそして、メスから卵を絞り出し、オスの精子を合わせて受精させます。その後、魚の部位の名称を学び、解剖を行い、サケ科の特性を学習します。後日、採卵した受精卵は、浮止まで成長の変化を観察します。採卵体験はサクラマスとニジマスで行います。同じサケでも種類によって異なる形態を持つことを学ぶことにより、北海道の在来種であるイトウやアメマス等についても学習することができます。

 遊漁学習会 水産行政者や研究者を招き、釣りをする環境に関する問題点の意見交換により、知識向上をはかっています。過去には、『ブラックバスってそんなに悪いやつ?』と題してブラックバスに関して学習会を行いました。そもそもはサケ科の魚種にしか関心がなく、ブラックバスについてあまり知識がないことと、自分たちの好むサケ科魚類にも悪影響を及ぼす事が考えられるために開催されました。この学習会は、北海道でブラックバスの放流が禁止される以前に、上川管内の遊漁団体が集まり、道立水産孵化場の研究者を招いて開きました。
 学習会では賛否両論ありましたが、道立水産孵化場の工藤さんより、寒い北海道には適応しないと思っていたブラックバスが、孵化場で越冬した話などを聞き、最終的には上川管内の遊漁団体として、既存の魚を守る観点から、ブラックバスが見つかれば率先して釣り上げ、再放流しない事を確認しました。

 埋設卵放流と追跡調査 旭川の川には、その
下流にある花園頭首工(深川市)の影響で、一時、遡河性魚類が少なくなりました。2000年以降、花園頭首工に魚道が設置され、魚の行き来が可能となりました。そこで、一度いなくなってしまったサクラマスを、再び定着させるために、受精卵の埋設卵放流とその後の生息調査を行っています。秋:発眼卵を飼育ケースに入れて河床に埋設します。孵化は埋設後約1ヶ月以内に起こるため、死んだ卵の除去や、飼育ケースに詰まる落ち葉の掃除、秋雨による河川の水位上昇への対応などを行います。冬:孵化後の仔魚のさいのうが吸収されて、魚らしく変化する時期です。河川の水位の低下により、飼育ケースが水上に露出し凍結しないように点検管理を行います。春:浮上が始まると、飼育ケースより放流します。放流は、成育状況に合わせて数回に分けて行います。夏:シュノーケリング(潜水)により生息密度調査を行い、生息箇所の確認等を行っています。これらの調査は、会員だけでなく、地域の有志にも声をかけて手伝ってもらい、できるだけ多くの人にサクラマスが定着する環境について考えてもらうようにしています。

2)大雪と石狩の自然を守る会
 当会では、石狩川上流域の環境を保護するために、開発局が主催する懇談会で情報を提言したり、河川流域の生態系を破壊する道路工事に反対運動などをしています。その中で私は、サケに関する活動を行う部局を担当しています。ここでは、サケに関する活動の背景と活動内容を紹介します。
 サケの飼育放流を行っていますが、この活動は1983年から続いています。背景には、1975年ころ旭川市内の石狩川から水銀が検出された公害問題があります。当時、「本来の川や人間の心を取り戻す為にどうしたらよいのだろうか?」と考え、サケを放流することで川への関心が深まる事を期待して、「石狩川にこそサケを!」をスローガンに、放流活動が始められました、飼育放流を開始した当時は、飼育する卵の提供を受けることがとても難しかったようです。1991年からは、教育活動の一環として、北海道が学校や市民団体等へ、卵の配布を始めたため、毎年5000粒の発眼卵を飼育放流しています。
 深川の花園頭首工に魚道が設置された2000年以降、旭川までサケが遡上していることが確認されています。2004年には、旭川市内を越え、愛別町まで遡上していることが確認されました。我々の活動は次のステップに入りました。ただ、サケが帰ってくればよいのではなく、「石狩川にこそサケを!」から「石狩川を野生のサケのふるさとに!」とスローガンを切り替えて、活動を続けています。
 サケにかかわる活動には、主に4つの分野があります。

 サケの飼育・放流活動 孵化場から譲り受けた発眼卵の飼育を市民に呼びかけ参加を募ります。参加者は里親として稚魚まで飼育し
ます。家庭や学校・企業等それぞれが違った環境と視点で、参加者は飼育観察をしています。放流の前には、アイヌ民族の儀式カムイノミで稚魚の旅立ちに安全祈願をします。本来、アイヌには放流の儀式はありませんでしたが、石狩川にサケが絶えてしまったため、この儀式が行われるようになりました。放流には市民が約200名参加し、サケに村する市民の関心の高さも感じます。また、秋にはサケの回帰祈願の伝統儀式であるカムイチェップノミも行います。旭川はアイヌ文化との関わりの深い町であるため、サケの回帰や放流の時にはアイヌの人と一緒に活動をしています。

 サケゼミナールの開催 里親になる参加者に対しては、サケがどういう魚か、サケの生態についての学習会をシーズン3~4回開きます。飼育にあたっての飼育方法や注意事項も伝えます。飼育中にも飼育状況の報告会や問題点の意見交換など、知識の向上と里親同士の交流をはかっています。

 情報発信 例会の名称を「ちゃらんけ(アイヌ語で談判の意味)」と呼び、一般市民に公開して、年に数回開催しています。例会では、主に地域の白然・環境・まちづくり等について話し合われます。1983年頃から、旭川にサケが上らなくなった原因である花園頭首工の撤去に向けて話し合いを行い、要望書も提出しました。地道な活動の甲斐もあって魚道が取り付けられる事になりました。最近では、旭川に遡上したサケの調査結果の報告や、サケの専門家による講義など、市民が参加できる学習会も開催しています。


 サケの産卵適地および湧水調査 石狩川にサケが産卵するのに適した場所かあるかを把握するために、踏査を行っています。また、湧水の有無を調べるために、聞き取り調査や、水温調査も行っています。現時点では、遡上数が少ないため、産卵床を確認することは、まだできていません。


3.感想と課題

・ちびっこ放流・釣り体験では参加される子供の保護者の方が夢中になっているのが印象的で、市民が気軽に釣りを楽しめる場所が無い事を感じます。また、釣り場の提供しか出来ていない状況であり、参加者に水辺の環境に関心を持ってもらう方法を考えることが、今後の検討課題です。

・採卵体験学習会は対象者が子供ですが、保護者も熱心で魚の生態はもちろん、食材の事など、いろいろな観点で質問があります。特に、魚を食べる事を含めたイベントが必要だと感じました。また、サクラマスは、採卵した卵を河川に埋め、翌春の稚魚放流までの半年間の観察学習をしますが、成長が著しい冬期間に、現地までのアクセスが悪く観察が難しいことが問題です。

・サクラマスの放流は、一度いなくなってしまった河川で行っていますが、近年言われている遺伝子レベルまで考えると、放流を続けていいのか迷うことがあります。しかし、同じ水系の種苗を確保することが困難なのも現実です。また、放流後に釣られてしまうことも多く、親魚の遡上による繁殖が確認されるまでの一定の期間は、釣り人の協力が必要だと感じています。

・2004年、旭川に遡上したサケは、残念ながら産卵しないでホッチャレになったことが確認されています。これからは、遡上したサケが自然産卵できるような環境作りにどう取り組んでいくか課題です。

・最近の大きな関心事は、天塩川水のサンル川に建設中のダムについてです。サンルダムは、洪水調節・流水の正常な機能維持・水道用水の供給・発電を目的としていますが、サンル川にはサクラマスが遡上・産卵する貴重な環境があることから、ダムの開発による自然環境の破壊を危惧しています。地域の市民団体としては、このダム問題にどのように取り組んでいくかが大きな課題です。

「北海道・淡水魚保護フォーラム No.6
 「なぜ、川の自然と淡水魚を守らなければならないの?」(2005年7月16日、札幌市)講演要旨
(C)2005 Naoyoshi Yamada, All rights reserved.