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第6回北海道淡水魚保護フォーラム

生物多様性保全と自然再生
生物多様性保全と自然再生


篠 健司 (しの けんじ)
  パタゴニア日本支社


I.会社概要:パタゴニア社

本社::アメリカ・カリフォルニア州ベンチュラ
日本支社:神奈川県鎌倉市
ヨーロッパ支社:フランス・アネシー(アルプス地方)
事業内容:登山、バックカントリー・スキー、フィッシング、サーフィン、カヌーなど機械の力に頼らないアウトドアスポーツのためウエア「patagonia」ブランドの製造・販売。サブブランドとして、女性のためのサーフウエア・ブランド「WaterGirl」、パドリング・ブランド「Lotus Designs」

Ⅱ.コア・パーパス(会社の存在意義)
 「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として、環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する。」
Ⅲ.環境への取り組み

●事業活動・製品による環境負荷の抑制
 1)1972年環境保護へ初めてのメッセージ「クリーン・クライミング」
 2)1991年4素材(ポリエステル、ナイロン、コットン、ウール)のライフサイクルアセスメント  を実施
 3)1993年PETボトルを再生したフリース衣料を世界で初めて発売
 4)1996年すべてのコットン製品をオーガニック・コットン100%に転換
 5)1998年カリフォルニア州内の事業所の電力をすべて風力発電に転換
 6)その他の取り組み

●環境活動の支援
 1)1975年草の根の環境保護グループを初めて支援:本社近くを流れるベンチュラリバー  の保護活動をしていた若者に、事務所の机と電話を提供
 2)1985年環境助成金プログラムによる支援を開始:売止の1%もしくは税引き前利益の10%のいずれか大きい額を、白然環境の保護・回復のために活動する環境グループに寄付。
 3)インターンシップ・プログラム:従業員が選択したグループでのボランティア活動に対して最長2ヶ月問有給休暇を支給する制度
 4)グラスルーツ会議:約70名の環境活動家を招待し、活動に必要なスキルやノウハウ、例えばマーケティング戦略、広報活動、ファンドレイズなどについて、社内外の講師を招き講義、ワークショップを行う2泊3日の会議。1年半に1回開催。
5)クリエティブ・サービス・サービス:環境グループの広告や印刷物のデザインをサポートするサービス
6)直営店店頭における沽動:環境グループのチラシ、情報の展示・配布、署名活動への協力、卜一クイベントの開催、ディスプレイによるメッセージの発信など
Ⅳ.全社環境キャンペーン

 全社横断的な環境キャンペーンは、特定の環境問題に対して1年間フォーカスします。
●1997年「オーガニック・コットン」
●1999年「再生可能エネルギー」
●2001年「遺伝子組み換え」
●2002年「原生地域の保全」
●2004年「サーモン・キャンペーン」、「環境に投票しよう」
●2005年「行動を見直そう」


Ⅴ.パタゴニア・サーモン・キャンペーン

1.「ワイルド・サーモン・キャンペーン」
 野生のサーモンの防衛に真剣に取り組みました。多くのコミュニケーション手段を活用し、野生のサーモン、そしてそのサーモンを支えている生態系が現在直面している脅威について、従業員やお客様に情報を提供し、啓発活動を進めました。

展開時期:2003年秋から1年間
キャンペーンのフォーカス:
●野生サーモンはキーストーン種である
●野生サーモンは生態系の健全性を表す生物
●サーモンは世界に共通するストーリーのメタファーである
●野生サーモンを農盤とする経済の存在

何が問題なのか?:
自然環境に何が起きているかという、より大きな視点に立ってサーモンを取り上げ、サーモンというレンズを通じて、以下のような問題を取り上げ、人間にとってのサーモンの重要性を経済的、文化的、政治的、そして精神的な側面から強調しました。
●工業的な農業⇒農薬を大量使用する集約的農業の河川、サーモンヘの影響は?
●遺伝子組み換え技術⇒遺伝丁組み換え技術がサーモンの養殖にも導人されている。
人工的に遺伝子を組み替えたサーモンが自然界に放出された時の影響は?
●森林破壊⇒野生サーモンの生息域で進む森林破壊による影響は? 土壌流出でサーモンの産卵場が破壊されて影響がでている。逆に、回帰するサーモンが減少することによる森林生態系への影響は?
●ダム⇒遡河性魚であるサーモンヘのダムの影響は?
●汚染・有害物質⇒サーモン養殖に使用されている化学物質-ホルモン剤、着色料など-による海洋環境、人体への影響は?
●先住民の文化⇒野生サーモンが歴史的に遡上してきた世界各国の地域では、先住民がサーモンを中心とする丈化を築いてきた。文化的、スピリチュアル的な影響は?
●経済の現状⇒野生サーモンの減少は、その健全性を基礎に築かれてきた地域経済にも影響を与えている。
●種の絶滅⇒かつては繁栄していた野生サーモンは、上記の環境破壊により絶滅の危機にある。

カタログの環境エッセイ:
●2003年秋「泳ぐ魂」byカール・サフィナ,
 「パシフィックサーモンの白然史」byジム・リシャトウィッチ
●2003年冬「贈り物:蘇ったサケ」byセス・ズッカーマン,
 「サケ以外はすべて蘇っている」byテッド・ウィリアムス
●2003年ホリディ「養殖サケはいらない」byラッセル・チャダム
●2004年初春「サーモン・ネーションにおけるシンプルな風習」byリズ・ウッデイ
●2004年夏「生命の深いつながり」byリチヤード・マニング

メデイアの活用:アメリカでは、太平洋岸北西部の環境グループ、Save Our Wild Salmon Coalition (SOS)と協調し、野生サーモンの健全な回復を推進するため、環境を重視した政策を支持する声を上げるよう、お客様に呼びかけました。パタゴニア社が実施したEメールによるアクション・アラートとアメリカ国内の直営店で展開した手紙送付キャンペーンを適して、15,000人以上のお客様が、野生サーモンを絶滅から保護するため、スネーク川とコロンビア川の下流域にある4つのダムの撤去を求める声をプッシュ政権に届けました。

 パット・フォード、SOS 事務局長からのメッセージ:「私たちがパタゴニア社の顧客から受けとった圧倒的な反応は、公私のパートナーシップが持ちえる力の大きさを示し、アメリカ市民が私たち国民の川に生息する野生サーモンに関心を持っている、という大きなメッセージを送ることになった」

サーモン・ネーション:「サーモン・ネーション」はアメリカ・オレゴン州ポートランドに本拠を置く環境グループ「エコトラスト」が展開する環境プログラムで、パシフィックサーモンが回遊する地域、北米のアラスカ州からカリフォルニア州、そして内陸ではアイダホ州、モンタナ州まで含む広範な地域を「サーモン・ネーション」と呼び、サーモンと人間の関係を回復し、この崇高な生物が再び環太平洋岸の人々を魅了することを目的としています。

顧客への呼びかけ:このキャンペーンの視点には、養殖サーモンの危険性をお客様に警告することも視点の1つでした。サーモンの養殖場ここで発生する廃棄物は、小さな町に匹敵する量になります。こうした養殖場による環境への影響と、それに伴う健康への影響に対する懸念は、つい最近になって注目され始めたものです。この問題についての認識を広めるため、ネバダ州リノにあるパタゴニア社のサービスセンターから米国内のお客様宛てに商品を発送する際は、Coastal Alliance for Aquaculture制作のチラシ“養殖とその危険性"と、Blue Ocean lnstituteが制作した、環境に責任のあるシーフードの選択方法について解説したガイドブックを同封しました。また、日本国内の直営店を含むパタゴニア直営店では、養殖サーモンの隠された環境へのインパクトについて説明した大型のパネルを作成し、ディスプレイされました。

その他のメッセージ:
●野生のサーモンを選び、養殖サーモンを食べないようにしましょう
●あなたが食べているサーモンがどこで育ったものかに関心を持ちましょう
●野生の状態に生息しているサーモンを見学しにいきましょう
●自分の国の先住民がサーモンとどのような関係を築いてきたか学ぴましょう
●あなたが暮らす町がどの流域から水の恩恵を受け、そしてあなたの日々の生活がどんな影響をそこに与えているのかに関心を持ちましょう
●あなたの町を代表している政治家・議員に手紙を書きましょう-野生のサーモンは政治家の言動に影響を受けています

助成金:パタゴニア日本支社ではこのキャンペーン期間中、カタログの配布、ファンドレイズTシャツの販売、ディスプレイを展開したほか、下記2団体に環境助成金プログラムを通じて資金提供しました。

●北海道淡水魚保護ネットワーク
●尻別川の未来を考えるオビラメの会
キャンペーンの費用(パタゴニア社全社):ワイルド・サーモン・キャンペーンのために費やしたコストを数値化すると以下の通りになります。
●カタログ見開きページ 約2,898万円
●広告費 約143万円
●直営店ディスプレイ 約195万円
●ウェブサイト 約122万円
●費用合計 約3,449万円

2.「ワールド・トラウト・プログラム」
 「ワールド・トラウト・プログラム」は、世界中の絶滅の危機に直面しているトラウトに焦点を当て、その認識を広げるとともに、資金援助を行うことを目的としています。

展開時期:2005年春から
ワールド・トラウトTシャツによる支援グループ:2005年は以下の3グループを支援します。
●尻別川の未来を考えるオビラメの会(日本・北海道)
●コロラド・トラウト・アンリミテッド/グリーンバック回復プログラム(アメリカ・コロラド州)
●ペノブスコットリバー・レストレーション・トラスト(アメリカ・メイン州)

環境エッセイ:「WORLD TR0UT」byジェームス・プロセック(本文2005年フライフィッシング・カクログ掲載,訳文:「Flyfisher」2005年6月号掲載、翻訳:東知憲氏)
“死滅した地球では、ビジネスは成リ立たない" デイビツド・ブラウワー

「北海道・淡水魚保護フォーラム No.6 
「なぜ、川の自然と淡水魚を守らなければならないの?」(2005年7月16日、札幌市) 講演要旨
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