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第4回北海道淡水魚保護フォーラム

旭川の川と魚たちの現状


出羽 寛 (でわ ひろし)
 旭川大学経済学部教授



はじめに

 私は野ネズミやコウモリの生態・分布調査が専門で、魚については2回程簡単な調査を行った事があるだけです。でも、子供の頃から川と魚には興味があり、この際旭川地方の川と魚について考えてみようと思い、パネラーになることにしました。今でもたまにヤマメ釣りや、近所の忠別川、石狩川でウグイ、ニジマス釣りに出かけています。釣った魚は食べるのが子供の頃からの習慣で、誰も見向きもしないウグイを今でも食べています。それは、川の水が汚れているからと云って魚を食べない、危険だから子供は川へ近づくなと云っていると、川の本当の面白さ、危険性も分からず、川から人が離れてしまうと思うからです。
 明治時代、石狩川は旭川市内を網の目状に蛇行して流れていました。戦後、特に高度経済成長期以後の河川改修で直線化し、河畔林が少なくなり、大雨の時以外の水量も減少しました。明治30年代頃、今の護国神社の境内付近は湿地で、砂地の水たまりに無数のカワヤツメが群れていたり、昭和26年11月、石狩川本流の金星橋付近でヤマメを6匹釣ったという記録があります(安井喜衛 旭川の円口類・魚類について 北海道の文化 第15号 1968)。昭和30年代前半頃の忠別川の神楽岡公園付近は河畔林が繁り中へ入ると外が見えないくらいで、私はその中の細流でウグイの稚魚の大群を追いかけて遊んでいました。秋になると神楽橋の上から遡上してきたサケが泳いでいるのが見え、毎年春に雪の残る忠別川へサケの稚魚を見にいくのが恒例でした。しかし、昭和39年に深川にある旧花園頭首工の改修でサケ、サクラマスは遡上できなくなり絶滅しました(平成11年に改修、魚道が設置されサケ、サクラマスの遡上が数匹確認されています)。
 数年前から旭川の川について気になっている事が2つあります。雨が強く降ると本流の水は濁りますが、3日程過ぎると忠別川、美瑛川の濁りはとれます。しかし、石狩川の濁りはなかなかとれない事です。また、川底の玉石にはどの川でも泥が付着しています。もう一つは岸辺の緩やかな浅瀬でもしばしばウグイの稚魚の姿が見えない事です。せっかく川へ出かけても、魚の姿が見えないとがっかりします。



旭川の川の魚

 現在の旭川に生息する魚はどうなっているのだろうか。それを知るために神居古潭から上流域の石狩川水系で行われた捕獲調査報告を探したところ、35編の資料が集まりました(表1)。まだ、見逃している資料がいくつかあると思います。指摘していただけると幸いです。その報告書から神居古潭より上流域では23種の淡水魚が捕獲されていることが分かりました(表2)。また、これらの報告書には入っていませんが、旭岳温泉付近では養殖しているティラピアが生息し、石狩川やその支流にはブラウントラウトが生息し、さらにイトウがまだ少数生息している可能性があります。また、サケについても旭川まで遡上しているという情報があります。従ってこれらも含めると27種の魚が生息している可能性があります。絶滅したのはサケ(遡上したものは放流魚由来と思われる)、サクラマス(在来個体群は絶滅したと思われるが、下流由来あるいは放流由来のものが旭川まで遡上している可能性もある)とチョウザメの3種、一方、外来種はニジマス、コイ、モツゴ、タモロコ、タイリクバラタナゴの5種に前述したティラピア、ブラウントラウトを加えると7種になります。すなわち、もともと21種が生息していたが、3種が絶滅し、2種の放流魚、7種の外来魚が入って、現在27種になっているものと考えられます。旭川地方の魚で最も大きく変化したのは、サケ科のサケとサクラマスがほぼ絶滅したこと、フナやコイ等の止水性の魚が生息する沼や淀みなどの環境が減少したこと、外来魚が5種ないし7種入ったこと、さらにウグイ類さえも減っているのではないかと私は思っていますが、これは昔と比較できる調査がないため分かりません。
 35編の報告書を見ると、その大半(25編)は大雪山系の高標高地の本流や渓流での調査で、かつダムや砂防ダム等の建設に関連したアセスメントや環境調査です。しかし、旭川市内の本流、支流では水辺の国勢調査と旭川市が行った自然保護調査がある位で、神居古潭から上流域までの各河川の魚類相や分布調査を系統的に行ったものがないことが分かりました。また、最も古い報告でも道立水産孵化場が行った1974年の大雪人工湖水産利用調査(湛水事前調査)と道が行った1976年の大雪山系自然生態系調査中間報告書で、それ以前の調査例がなく、昔と現在の生息状況を比較することも出来ない状況です。以上のことから、次の2点について指摘しておきたいと思います。
1 現在までに行われた調査例を活かしながら、神居古潭より上流の各河川の魚類相・分布調査を系統的に行うことが必要だと思います。その際、研究者だけでなく釣り同好会や魚や川に関心のある市民を交えて調査が行うことが大事だと考えています。
2 昭和30年代以前の川や魚の生息状況については、年配の釣り人からの聞き取り調査によっておおよそのことを把握しておく必要があるのではないでしょうか。また、サケやサクラマスについては瀬川さんの発表にあるように昔の資料がある程度使えると思います。



志比内川の魚

 もう一つの事例として、私が調査にかかわった志比内川での魚の生息状況について紹介します(志比内川改修工事魚類追跡調査報告書 2001 )。志比内川は美瑛町、東神楽町を流れ、志比内橋下流で忠別川に合流する、流路延長11km、川幅2~3mの小さな河川です。合流点から最上流の近くまで12ヵ所の調査地点でこの川の魚類相、生息密度、魚道の利用状況を調べるためにサデ網、たも網と電気ショッカーを使用してフクドジョウ、ドジョウ、ハナカジカ、スナヤツメ、ニジマスの5種4,737尾の魚を捕獲しました。捕獲した魚は体長、体重等を測定した後、再度放流しました。また、地元の年配の釣り人(東川・東神楽淡水魚育成会)から聞き取り調査を行いました。その結果、表3に示したように、昔はサケ、サクラマス(ヤマメ)、アメマス、フクドジョウ、ドジョウ、ハナカジカ、スナヤツメ、ウグイ類の8種が生息していたが、サケ、サクラマス、ウグイ類の3種が見られなくなり、外来魚のニジマスが入って現在は6種が生息していること、その内フクドジョウが最も多く生息し、ハナカジカとスナヤツメも普通に生息しているが、アメマスは聞き取り調査よって、最上流部に痕跡的に残っていることが分かりました。この調査で私が強い印象を受けたのは次の2点です。
1 現在この小河川に30箇所もの砂防ダム、落差工、床固工という横断工作物が数百mの間隔で設置されています。それぞれに魚道があり、フクドジョウ、ドジョウ、スナヤツメは利用していますが、ごみでつまったり、流れが変わって魚道に水が流れていない箇所もあります。土砂災害を防ぐために砂防ダム等の設置が必要なことは分かりますが、どうしてこれだけ多くの横断工作物が必要なのか、私にはどうしても理解できませんでした。
2 最も強い印象を受けたのは、60才から88才までの7人の地元の人達からの話でした。その内の一人、地元で釣り名人と呼ばれている人から、河川改修以前の志比内川は蛇行して、川岸に草や木が茂り、落ち込み(淵)もあり、今とはすごく違っていた。子供の頃、学校から帰り釣りに行くとヤマメがすぐに30~40匹は釣れた(当時の楽しみだった)。アメマスは上流に多く、ヤマメは下流に多かった。志比内の秋祭の頃(9月はじめ)サクラマスが上ってきて、ほり(産卵床)を見つけ卵を取った(釣りの餌にするため)。付近には卵を食べに来る魚がいた。その後に、サケが上ってきた。ウグイは本流よりも志比内川の方が多かった。縞のあるドジョウが水田にも沢山いて、除草剤のせいで白い腹を見せたドジョウの稚魚が沢山死んでいた。そして最後に、今はニジマスを放流して楽しんでいるが、本当に釣りたいのはヤマメやアメマスです、と話してくれました。小さな川ですが、昔はいかに豊かな川であったかということが実感出来ました。ニジマス釣りも面白いが、本当はヤマメやアメマスを釣りたいというのが、その釣り名人の本音だと私は思います。それが可能になり、子供たちが魚すくいや釣り、水泳ができるような身近な川を取り戻すにはどうしたら良いのか、そのことを皆さんと考えてみたいと思います。


「北海道・淡水魚保護フォーラム No.4
 「川の環境と魚の豊かさ」(2003年7月13日、旭川市大雪クリスタルホール) 講演要旨
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