ホームページ 北海道淡水魚保護フォーラム報告 オピニオン 運営委員 書庫 お問い合わせ 活動の記録 更新履歴

第2回北海道淡水魚保護フォーラム


帰山 雅秀

帰山 雅秀 (かえりやま まさひで)

北海道東海大学工学部
 


 
 先般(11月5~6日)、札幌の姉妹都市ポートランドで環太平洋各国におけるサケ科野生魚の保全に関する国際会議が開催されました。この席で、サケ科野生魚が最も危機的な状況におかれている国はロシアと日本と評価されました。ロシアは密漁で,日本は都市化がその理由です。



北海道の河川と魚類の現状

 それでも、カムチャッカの河川では北海道のそれに比べて魚類の種数と個体数が非常に多いのに驚きます。生態学の教科書では、淡水では北方ほど生産力が低く、魚類の種数も個体数も少ないと教えています。したがってこの結果は、北海道の河川における自然生態系が著しく損なわれており、生物多様性が低いことを表しているのでしょう。北海道の河川生態系は1970年代までに、ショートカットと河床掘り下げに代表される高水工法に基づく河川改修工事により自然が著しく失われました。ここでは、その一例を十勝川で紹介します。その結果、魚類の生育場や産卵場所が著しく損なわれ、魚類は不連続に、バッチ状にしか分布できなくなりました。最近になり、近自然工法による河川の自然生態系の回復が試みられるようになりましたが、すでに直線化され、限られた河道内でどれだけの効果が期待されるのか疑問が残ります。



新たな脅威

 そのように厳しい河川環境でバッチ状に分布する魚類にとって、さらに新たな脅威が最近加わってきました。著しい釣り人口の増加と外来種の導入です。日本における河川・湖沼の釣り人口は、1988年の143万人から1998年には223万人まで増加したといわれています。北海道でも釣り人口は40~50万人とみなされております。因みに、1999年に河川で観測されたサクラマス親魚の個体数は12,555尾(北海道8,696尾、本州3,639尾)です。こうなってくると魚の数より釣り人の数の方がはるかに多いのではないかと思えてきます。わが国の釣り人口の増加は、「余暇の増大と自然志向への高まり」と言われております。前者は分かるような気がします。しかし,後者は本当なのでしょうか?RV車で川の源流部や湖畔の波打ち際に入り込んだり、養殖されたニジマスを放流して自然河川を「釣り堀化」することが「自然志向」なのでしょうか?
 外来種は、自然環境の乏しい河川生態系やバッチ状にしか分布できなくなった在来種に多大な影響を及ぼします。その例を支笏湖のニジマスとブラウントラウトの例で紹介します。両種は、明らかに支笏湖の魚類群集構造に影響を及ぼすばかりか、捕食種として在来魚に脅威を与えています。



生態系保全の重要性

 なぜ、生態系の保存が大切なのでしょうか?生物は、何百万年という時間をかけて進化してきた歴史をもつ自然の遺産です。その集合体が生態系です。生物間の相互作用こそが、生物多様性をつくりだすもとになります。食う-食われるの関係、様々な寄生・共生関係、餌や生息場所をめぐる競争、互いに利用し利用される植物と動物との間の複雑な関係、異性をめぐる争い、近縁種間での交雑などなど。このような複雑な生物間の相互作用が幾重にも重なり合いながら、安定した多様な生態系が形成されます。人類は、現在、この地球生態系のドミナントに位置します。長い時間をかけて形成された生態系が人類の「一時」の活動によって著しい影響を受けることに熟慮する必要があります。国際資源保護連(IUCN)では、生態系を破壊する重要な要因の一つに外来種の移入をあげています。
 現在、北海道では外来種の放流を、ブラックバスとブルーギルの2魚種のみに限定して禁止しておりますが、ここに生態系を保護するという考えはみられません。外国の場合はどうなのでしょうか?アラスカ州では、基本的に、何人も「活きている魚(活魚)」を「所持」、「移入」、「移出」および「放流」してはならないことになっています。それらの行為をするには,厳しいいくつもの条件をクリアして、州政府委員会の許可を得なければなりません。そこに、自然を私物化してはならないという思想を垣間見ることができます。



アクション・プランの必要性

 北海道の失われた自然を取り戻すには、とてつもなく長い時間と莫大な費用がかかることと思いますが、私たちが北海道の野生魚と自然を守るという気持ちが一番大切であると思います。そのアクション・プランづくりが現在私たちに課せられた課題ではないでしょうか。そのためにも、これ以上自然を破壊する行為は避けたいものです。


「北海道・淡水魚保護フォーラム No.2 川の環境と淡水魚の多様性を守る」
(2001年11月24日、大沼国際セミナーハウス) 講演要旨
(C)2001 Masahide Kaeriyama, All rights reserved.